お風呂上がった後、薄暗い自分の部屋の中に入るとベッドヘッドに背中を寄りかかる北斗がいる。
綺麗な三角形の鼻の上にはヴィンテージ風の眼鏡が掛ける、その視線の先は見覚えたたハンドアウト。前日自分もレコード会社のスタッフからそれを貰った。
表紙に次のアルバムに入いる曲のタイトルが書いている、ペア曲の中に一つ、俺と北斗のだ。
次のアルバムに俺と北斗はペア形になった、正直この組み合わせはまだ先と思っていた、でもスタッフのみんなと色々考えた結果そういう状況になった。
北斗と二人で歌う形になったら曲のジャンルやテーマは何となく俺の中では決めていた、あの頃の二人がよく歌うような曲や設定が頭に浮かべた。
そしていざ打ち合わせした時北斗もスタッフも同意だった、やっぱりかと思ていた。
タオルを首に垂れるベッドに腰掛けた、少し沈めるマットレスのせいで俺の気配を気づいた北斗は手にある紙からこっちに視線を向けた。
「ジェシー、おかえり」と一緒に顔がほころぶ。
それを見てミラーリングのような、俺の顔も緩まる「ただいま」と応答した、北斗の頬に軽く口付けた。
二人の肩が触り合う距離で北斗の隣に座り込む、「まだ歌詞を覚えようとするの?」そう聞くと北斗はううんと首を振る。
『覚えるっていうか、今はただ歌詞を読もうだね』と言い足す。
「へー やっぱり北斗は読むのが好きだね。んで、なんか面白いことある?」
俺も何回も歌詞を読み終わった、でも俺が意味した「読む」と北斗が思いつく「読む」はきっと何処か違う。
普段本を読むのが好きな北斗はこの数少一節の中で何か見つかるのか俺は不思議がる。
『ンーとね、この曲って凄く真っ直ぐで率直に聞こえるでしょう、でもねその上にまだ何が有る気がする』そのハンドアウトにまた視線を向かて北斗はそう言いていた。
「えぇ、どんなこと?教えて」北斗の腰に腕を廻すながら顎を彼の肩に乗せて、北斗の瞳に映る紙の上にある文字達は当然に動いていない、そうでも俺はその紙を見やがる。
『ンーー ジェシーはさ、“愛しい”って“かなしい”とも読めるってことは知ってる?』
「えぇ?!愛しいのあの愛の漢字が乗ってるやつ?」
『そう』
「へ〜今初めて知った」
『ふふふー あんまりそういう風に使わないからね』
「そうか」
『うん。んでね、俺はこの曲の全体歌詞が理解してると「愛しさほどけない」のパートが何となく「かなしさがほどけない」にみえる。誰かを愛し過ぎて悲しくなるって感じ、これが考えるとこの曲もっと切なく感じる』俺にだけ聞こえる声でそう囁き北斗は優しく紙を撫でた。
彼はずっと前から繊細でちょっとネガティブ向きけど優しいさが溢れる人である、こういう風に歌詞のことを哀れるも凄く北斗らしいと思う。
でも俺は俺でネガティブな部分も持っている。
「北斗はどう?」
『ん?どうって?』
「人を深く愛すこと、かなしいって思う?」そう尋ねる俺は北斗の目を見る。
彼は少し驚いた目で俺の顔を見て、その後優しく微笑んだ。
『俺はその人がジェシーだから幸福の方が優勝だよ』そう言いった北斗は俺の頬に掌を置いた、その瞳中には羽一つも嘘はなかったような。
温かい北斗と手を寄り添って胸の奥まで暖かさが広がった。
「そうか、なら良かった」北斗の手を自分の手で掴む、その指の節に口付けた
「北斗、愛してるよ」そう言いった後今度は北斗の唇に触るだけのキスを落とした。
耳にまで赤く染めた北斗は俺の身体に腕を回し、思いっきり抱きしめた
『俺も愛してるよ、ジェシー』俺の胸にそう囁いた。
今度切ない歌を歌う我々はとてつもなく穏やかに愛し合い、それは永遠にそうで有りたいと俺は祈る。